otomo

俳優矢崎広くんと若手俳優さん中心の舞台観劇&映画ドラマ感想ブログ

MACBETH②


ラフォーレミュージアム原宿
18日マチネ〜千秋楽。



13日ぶりの観劇。どんどん良くなっているという評判を聞いていたので大変どきどきした。

随分声が枯れているなという印象。叫ぶ台詞ばかりだから心配していたけれど、若干それで聞き取りづらい台詞がいくつかあったのがちょっと残念。
ダンカンを殺したマクベスが、血の付いた短剣を握ったまま戻って来るシーンが少し変わっていた。血で真っ赤になったマクベスの手を握り、自分の手も汚れてしまった夫人が口ではマクベスを叱咤しながらも嫌悪感で思い切り表情を歪める。千秋楽Fブロックで観ていたらその表情がとてもよく見えた。ああこの嫌悪感があるから夢遊病状態の時に必死に手を洗おうとしているんだなと繋がってゾクッとする。
「アーメンと言えなかった!」の辺りがどんどん良くなっているなと思った。恐怖と絶望と後悔でとても惨めなマクベス。矢崎マクベスは大変人間臭いなと思う。

暗殺者に暗殺を依頼する直前、退室する夫人達を振り返って見送ってから前を(通路)を見る時眦が上がって完全に顔が変わっているのがHブロックからとても良く見えた。
暗殺者の報告を聞くところでも、やはりHブロックからだと表情が良く見える。笑みを浮かべながらも憤っているのが分かってとても怖い。良い表情の変化をするなー。
宴会のシーンではマントが外れなくなっていたので安心して観る事が出来た。前半毎回外れてしまっていたのが気になっていたので。
バンクォーの亡霊に怯えて取り乱しながら、夫人を見る目が不安に満ちている。姉さん女房に甘えているような印象。やっぱりこの夫婦は夫婦というより親子っぽいイメージ。でも夫人を抱き締めるところはとても愛情を感じる。
滅茶苦茶になった宴で着席を勧めるものの、椅子が倒れて座れる状態では無くなっている、というシーンがとても好き。あの唖然とした顔。どんどんマクベスが追い詰められ壊れて行っているんだなと哀れにさえ思う。

夫人の夢遊病のシーンでは、夫人の溜息が前半(前回観劇した13日まで)と声の出し方が違っていた。甲高い声から、地の底から沸き上がるような震える低めの声に。あの声はとてもゾクゾクする。泣き声と良く似ているけれど、それとは違う溜息の声。凄い表現力。心臓が痛くなる。
このシーンで毎回思うのは、医者と侍女デキてるだろっていう…目配せとか、シャツをぎゅっと握ったりとか、長倉君の侍女がとても可愛くて尚かつ色っぽいので大変ドキドキしますすいません。彼の女役はとても好きです。

医者とマクベスのシーンは何度観ても大変怖い。
感情の上下の波がとても大きくて、ハラハラしてしまう。夫人を抱き締める時には愛おしそうに背中を撫でていた手が、医者の背中を撫でる時には完全に媚を売っているねっとりとした撫で方でとても気持ち悪かった(褒めています)
ギラギラとした目で静かに話すアンバランスさと、突然激昂する不安定さで医者同様今すぐ逃げ出したくなる怖さ。そしてマクベスがとても惨めで哀れだと思う。
捌ける時の「鎧は、鎧はどこだ」の言い方が少し変わっていた。13日までは怒鳴るような言い方だったのが、静かで低い声に変わっている。この言い方の冷たさと、前を向くギラギラした目のアンバランスさが心の不安定さを強調しているなと思った。

マクダフがロスから妻と子どもが惨殺されたと報告を受けるシーンは、何度観てもその静かな怒りと後悔と憎悪のがまるで青い炎みたいに見えて胸が苦しくなる。松村さんの演技はさすがに大変安定していて特に前半と後半での変化は無かった。最初から最後まで安定して高い水準を保っていらっしゃるのはさすがとしか言い用が無い。

マルカムの大袈裟な演技はとても良い。あの、1人だけ浮いている感。空気の読めない感じ。
悪い人では無いんだろうな、と思いつつも世間知らずの王子様だなーと納得させられる。きっと真っ直ぐな王になるのだろうな、と思うとマクベスが更に黒く見えて少し悲しくなってしまう。

夫人の死を知る所は、あの静かに発する最初の「何も今死ななくても良いものを」の空虚感がとても切なくなる。全てを手に入れようとして一番大切なものを喪ってしまったんだなと、喪失感で嘆くマクベスが哀れで仕方が無い。2人で生きてきたのに、孤独に死んでゆくのだなと思うとこれが罰なのだろうかと思う。陽の光はもうたくさんだと言うマクベスが切なくてたまらない。
武器を持てと決意し、「風よ吹け、破滅よ来い、せめて鎧をつけて死ぬぞ」という時には夫人の死をきっかけにして正気に戻ったのだろうか、気高さや雄々しさのようなものが見えて初めて勇将マクベスの顔が見えたような気がした。まさに、汚いは綺麗の言葉通り。

マクダフとの一騎打ちの殺陣は、千秋楽は本当に手に汗握るような気迫が感じられた。重い剣が本当にぶつかり合っているからこその難しさと危険があるのだろうけど、それがちゃんと形になると大変見応えのある殺陣になっていた。戦場が見えたような気がした。
千秋楽はFブロックで、四方を魔女たちに囲まれ逃げ場が無くなったマクベスが振り返り顔を歪めるのがはっきりと分かって震えた。
マクダフに倒されるところは、前楽がとても良かった。それまではずっと腰の剣の鞘を気にしつつ倒れていたのが凄く勿体無いと思っていたので、前楽は鞘に一切触れず自然に倒れていた。ただ、千秋楽ではやはりちょっと気にしているのが分かってしまったのが残念。危ないのだろうけど一思いに倒れて欲しかったなと。

千秋楽の挨拶。
カーテンコール2回目でもうぴろしは泣いてしまって俯いていた。スタンディングオベーション。鬼気迫る大変迫力のある千秋楽をみせてもらったので、スタオベに抵抗は無かった。
1人で出て来て、もう最初からぼろぼろ泣きながら
「どうしよう…あ、喋りまーす」
と緩い言葉に思わず客席から笑いが。マクベスが抜けて、矢崎広というかぴろしになったなと思った。
汗と涙をぽたぽたと落としながら、どうしようまとまらない、何を言って良いのか、と戸惑っている。その姿を見守る観客。一時間くらい喋っちゃいそう、と言うぴろしに客席から「良いよー」と声がかかると思わず笑って無い無いと首を振る。マクベス後に彼の笑顔を見ると心底ホッとする。
「四方にお客さんがいるから、ぐるぐる回りながら喋っちゃう」
「本当に色々な事があったんですけど、皆さんに感謝です。シェイクスピアにも感謝したいくらい」
「共演者の皆さんにも本当に支えて貰って。もちろんお客さんにも本当に感謝しています。皆さんがいて、僕がいて」
僕がいて、ってところで客席から笑い声。
「いや、僕も頑張ったなーって」
客席からの拍手に、そういうんじゃないんですと戸惑っている。
終始上手くまとまらなくて、ただ何度も感謝という言葉とありがとうを繰り返して泣いていたのがとても印象的。
最後、矢崎広の顔でくしゃあっと満面の笑みを浮かべて両手を大きく振って捌けていったのを見てじわっときた。笑顔で終われた事を、彼のその笑顔を見れた事を本当に幸せだなと思った。

人間臭い、等身大の人間であるマクベスが矢崎広のマクベスなのだろうかと思った。若さと青さということを前面に押し出している気がして、マクベスの勇将っぷりであるとか、強い将軍というイメージは正直殆ど見る事は出来なかった。
ただ、青臭く野心に燃え、そして惨めに堕ちてゆく若きマクベスというのは矢崎広という役者にとても合っていたと思う。合っていた部分と、そこまで造り上げてきた部分があるのだろうなと思う。
役を造り上げていく過程というものは観客が知る部分では無いし、それは知らなくても良い事だと思っている。“観ていて役造りが見えるようでは駄目”と言っていた役者さんがいて、そういう事だよねと頷いた事を思い出した。舞台に立つ時は、マクベスを演じている矢崎広では無くその空間で生きて、そして死んでゆくマクベスなのだから観客は矢崎広では無くマクベスの人生を観る事が出来るかって話なのよね、と。ちゃんと青臭く野心に溢れ、惨めで哀れだけれどとても人間臭いマクベスという男の堕ちてゆく様と死を見届けられる事が出来たんではないかなと思った。

初主演という記念すべき、そしてもう一生おとずれない特別な舞台がMACBETHで、板垣さんの演出で、あのキャストで(永田くんのマルカムも是非観たかったけれど)本当に良かったと思う。何度もこのブログで言っているけれど、私は矢崎広という人のファンになってとても日が浅いのだけれど、MACBETHを観る事が出来て本当に本当に幸せだった。
大変良いものを観せてくれて本当にありがとう。また、チケット代以上のものを観させてもらった。しかもラフォーレ原宿で。ただただ充実した時間をありがとうと言いたい。私は彼のファンであることにとても幸せを感じた。
3月に発表があってからずっと待ち続けていた舞台だけれど、始まると本当にあっという間で、終わってしまったなーという空虚感に襲われている。それでもマクベスでまた更なる成長の基盤が出来た気がするので今後がまた楽しみでならない。

我が儘を言ってしまえば、また10年後くらいに経験と年齢を重ねた矢崎広のマクベスを観てみたいなと思った。
スポンサーサイト

カテゴリー:舞台
テーマ:観劇  ジャンル:学問・文化・芸術

コメントの投稿はこちらから ♥

COMMENT-FORM

SECRET

プロフィール

aka

Author:aka
俳優矢崎広くんが好きです。
若手俳優中心の舞台関連の感想、レポ、企画中心
最近映画と海外ドラマの感想もはじめました。

月別アーカイブ

カテゴリ

予定

2016観劇済
うるう/ETERNAL CHIKAMATSU/『帝一の國』-血戦のラストダンス-/ジャージー・ボーイズ/KAJALLA「大人たるもの」/若様組参る/TARO URASHIMA/宮本武蔵(完全版)

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR