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俳優矢崎広くんと若手俳優さん中心の舞台観劇&映画ドラマ感想ブログ

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小林賢太郎演劇作品「うるう」


本多劇場
2/27マチネを観てきました。


「うるう」は4年前の閏年、閏日あたりに上演された作品の再演。理由あって4年前に観ることが出来ずにいたので4年越しに念願叶って漸くうるうを観ることが出来た。個人的に本多劇場も凄く久しぶりだった。

ストーリーとしては、とある深い森の奥に住むひとりの男ヨイチ。彼は閏年の閏日に生まれた。彼は常に社会からあぶれた人だった。まさにカレンダーの閏日のように、トランプの余りのジョーカーのように常に彼の席だけが無かった。
「いつもひとつ余る。いつもひとつ足りない」
そんなヨイチはたったひとりで森の奥に、隠れるように暮らしている。そこに訪れたマジルという少年。彼はヨイチと同じ閏年の閏日生まれ。だがヨイチと正反対にみんなの人気者だった。始めは押し掛けてくるマジルに迷惑していたヨイチだったが徐々に交流が生まれていって……

「うるう」という作品の前身にあたるのは、2011年に上演された小林賢太郎ソロプロジェクトであるPOTSUNENの「THE SPOT」内の演目「うるうびと」
「うるう」は「うるうびと」をなぞりつつ独自の進化を見せた、いわばセルフパロディから発展した全く別の物語となっている。THE SPOTはディスク化されているので見ることが出来るけれど、こちらは狂気と寂しさが漂うつくりになっている。しかしこの「うるう」はそれをなぞらえた上で全く別の終着点を見せている。
「うるうびと」はたったひとりだったが「うるう」のヨイチには友達が出来る。ヨイチ38歳にできた友達マジルは8歳。30歳も差がある彼らはどんどん親交を深めていく。頑に誰も寄せ付けようとしなかったヨイチに音楽家を夢見るマジルは自分が作曲した「まちぼうけ」という曲をプレゼントし、ヨイチはマジルに自分の秘密の菜園を見せる。光に包まれた菜園がとても美しい。友人として心通わせる彼らだったがヨイチには誰にも言えない秘密があった。それは彼が閏年の閏日、4年に一度しか歳を取らないという特異な体質であること。人を好きになってもどうしたって自分は置いて行かれるのだから、そもそも人を好きにならなければ良いと頑になりせっかく出来た友達に背を向け更に森の奥へと逃げることを選んだヨイチ。マジルの姿が見えなくなるまで、高い木に登り姿を見送ると深い哀しみに嗚咽を漏らして涙する。それがやがて、森の奥には「うるう、うるう」と鳴くオバケがいるから森に入ってはいけないという伝説が生まれ、人々は増々森へ近づくことはなくなり40年が経った閏年、ヨイチは10際歳を取り48歳になっていた。
もうマジルという歳の離れた親友がいたことは忘れようと、たったひとりで生き続けるヨイチはふと森に響く音楽に出会う。低く柔らかく響くチェロの音色。それはヨイチが良く知る曲。そう、あの日ヨイチがプレゼントされた「まちぼうけ」という曲だった。曲を頼りに駆け出すヨイチ、曲はいつしかカノンへと変わり深い森を優しく深く満たしてゆく中懸命に駆けるヨイチは最早何もかも振り切ってただそこに待っていてくれる筈のたったひとりの親友に会いたい気持ちだけで体を動かしている。静かに進んでいた物語が一気にヨイチの感情によって揺り動かされ突然加速してゆくこの瞬間がたまらなく胸が一杯になった。もうヨイチはあらゆるしがらみを捨ててただ会いたいという気持ちだけで走っている。
ついに再会したヨイチとマジル。あのとき8歳の少年だった彼は今や48歳に。ヨイチと同じ年齢になっている奇跡にただただ言い様の無い感動で涙が出た。

「うるう」は小林賢太郎の一人芝居の態でありながら実は舞台に立つのはひとりでは無い。ずっとチェロの生演奏で舞台の片隅にいたのはラーメンズファンにはおなじみのチェロ奏者である徳澤青弦さん。チェロを喋らせることの出来る人。いやほんとに、喋ってるんだよ。一人芝居と見せかけて実は二人芝居であったという仕掛けはトリッキーでありながらすとんと納得出来るから面白い。そう考えるとずっと傍らで演奏し続けていた青弦さんがずっと最初からマジルだったとしたら、うるうという作品はマジルの回想劇でもあったのかなーなんて思った。思い返してみればマジルがヨイチと出会ったところからはじまり、ヨイチの半生のその殆どはヨイチが自らマジルに語ったことだったりするから。そう考えると今度は最初から青弦さんを見ていたくなるなあ。
4年に一度しか歳を取らないヨイチにとって、人と出会う事はもしかしたらとても辛く苦しい事なのかもしれない。けれどマジルとの出会いによって生まれた確かな温かさがあれば彼は孤独では無く生きて行けるんじゃないか、と思ったし、そう願ってしまう。

あの孤独と悲しみの「うるうびと」から希望を見出せる美しく切なく温かな「うるう」に昇華させた小林賢太郎はここ数年の作品どれも人の善であったり光であったりを信じているものが多いように感じる。きっと彼自身、「うるうびと」であるヨイチを愛したからこそ「うるう」で希望を与えたかったのかな、なんて色々な事を考える。昔のラーメンズとかすごく尖ってたよなーと思うとこの人の内面が大きく変わって丸くなったんだろうなーと、しみじみそんな事を思った。
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カテゴリー:舞台
テーマ:観劇  ジャンル:学問・文化・芸術

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